〈産地情報〉 ずいき(芋がら・割菜)

■ずいき畑
ずいきは、「芋がら」という呼び名からも分かるように里芋の茎のことをいいます。春から夏にかけて栽培された里芋は、(当然ながら)地中に里芋、地上に茎が伸びていきます。大人の腰丈ほどに育った里芋の茎は9月から11月頃にかけて収穫されます。
収穫後、乾燥させずに料理する生のずいきは、 だいたいが八頭(やつがしら)という品種の里芋の茎。この茎は、真っ赤な色をしているのが特徴で、 徳島での収穫量は非常に少ない物です。
※今回、お邪魔したのは11月。収穫はかなり進んで、畑には少しの里芋を残すのみとなっていました。

ずいきの疑問<その1>〜里芋か、ずいきか?〜
里芋の茎であるずいき。その下には当然のことながら、里芋が生育しています。徳島県の名産であるずいきは元来、里芋栽培の副産物。ここ板野郡や名西郡のずいきも里芋栽培が第一の目的です。ところが、全ての里芋の茎がずいきとして加工されるわけではありません。なんだかもったいないような気もしますが下処理、干し作業など、ずいきに加工するには多くの手間が必要で、全てに手をかけるわけにはいかない事情があるそうです。

根元には里芋のかたまりが…。 茎は青く、芽が赤い「赤芽ずいき」。徳島で栽培されるものの大半は、この赤芽ずいき、もしくはセレベス種です。乾燥すると、茎の青色は茶色に変わっていきます。  

ずいきの疑問<その2>〜生か、乾燥?〜
ずいきは、実は生でも食材として利用されているのをご存知ですか?石川県などでは生のずいきを茹でた後、酢の物などにする郷土料理があります。このときに使われるのは、「八頭(やつがしら)」という種類の里芋の茎。上から下まで真っ赤なずいきです。徳島で盛んに栽培されているのは、赤芽やセレベス。徳島では、ずいきは生よりも乾燥させる方が、断然多くなっています。この理由は、収穫の時期の違い。収穫時期の早い八頭は、その暑さから茎を乾燥させることが出来ません。ところが、秋の初めに収穫されるセレベスや赤芽は腐敗の心配なく、茎を干して乾燥品としての加工が施せるのです。

■収穫後の作業    
背の高い茎は、刈り取り後、畑から持ち出すのが大変な作業。担ぎ出すように収穫された生のずいきは乾燥させる前に下処理を行います。
まず、丁寧に外皮をむきますが、実はこのむき加減がずいきの風味を決める大切なポイント。むき過ぎると、味気の無いずいきになってしまいますし、残しすぎるとえぐみが強くなります。ちょうど良い加減に手早く皮を除き、適当な大きさに割っていきます。
ずいきの中心にある「芯ずいき」。 適当な大きさに割られた茎。

■乾燥    
下処理された茎は手作業で干されていきます。丈が長いので、ぶら下げるようにして干します。 収穫終了間近であったため、収穫量が少なく干す量も少なめです。収穫最盛期の頃は、もっと量も増えますが、そのときも同じような手法とのこと。 この丈の短いものは「芯ずいき」を干したもの。軟らかく、とても美味しいずいきです!が、生産量が少ないため、市場には出回らず、生産者の方々で食べてしまうとか。うらやましいですね…。

■乾燥後    
ほんの少量あった八頭の茎で作ったずいき。上から下まで赤いのが特徴です。 右から9月頃に収穫した物、約1〜1.2m、10月で約1.2〜1.8m、11月で約0.8〜1m子供の背丈ほどです。 こうして、干しあげられたずいきは貴重な国内産ずいきとして全国へと出荷されます。産地の方々も、ずいきは日常の食材。汁物、酢の物はもちろんのこと、煮物や炊き込みご飯など、何にでも入れられるそうです。

■訪問を終えて
タイ産をはじめとする外国産のずいきが多い中、代表的な国産ずいきの産地である徳島県。
豊富な食物繊維など、栄養的な特徴が見直されて今、注目の食材ですが、産地でも「産後の古血をおろす」「お腹をあたためる」など、ずいきの効用が言い伝えられ、今でもいろいろな料理に利用されています。
今回の訪問は、ちょうど今年最終の収穫時期と重なり、下処理作業、干し作業と丁寧な生産の様子を見せていただくことが出来ました。生でも美味しいずいき、干すことで風味がますます豊かになる貴重な日本の食材です。国産ずいきを支える大切な過程を見せていただきました。
徳島県名西郡・板野郡のみなさん、ありがとうございました!!